移住女性としての私が望むこと2011.7
私達のように、韓国にお嫁にきた、外国人女性を
韓国では「結婚移住女性」略して「移住女性」と呼ぶことがあります。
この移住女性の韓国社会に占める割合と、その子女達の割合が、どんどん増加し
韓国政府がその対応策をいろいろ実施しています。
移民をたくさん受け入れて放置しておくと、
その層が社会の不安定層になるという現実がありますから
韓国政府、何年か前から、動き始めました。
移住女性に対する韓国語教育だったり
子女に対する学習援助だったり。
政策というのは実施してみると、いろいろ現実とズレがあったりするので
受給者のとしての立場に立ってみたとき、 「あれれ??」 ということが少なくありません。
特に日本人は、韓国より先に近代化が進んだ国からからきているので、
発展途上国から来た移住女性とは、また立場や発想が違います。
といっても、やはり韓国人ではない母親が
ここで子女を韓国人として教育していく難しさを感じているという点では
同じなんですけどね。
私は「多文化家庭支援センター」の職員も経験してみたのですが
やはり、なんというか、いろんなズレを感じました。
日本人である私が、韓国人と同じ仕事を韓国語でしないといけないので
もちろん仕事も大変でしたが、何より精神的に大変でした。
しんどかったなあ、あの時期は。 いまはそういう意味ではかなり楽に暮らしています。
田舎に住むようになって、日本人以外の移住女性の知り合いがたくさんできて
いろいろ考えて、現在次のような考えを持つようになりました。
移住女性にもいろいろいるので、考えも様々です。
このブログの執筆メンバーは5人ですが、
韓国に住みながら思うことはやはりそれぞれ違いますので
その色を文章に出していけたらなと思います。
以下、先日、韓国の新聞にアップしたコラムです。
これは最初から韓国語で書いたものなので、
文章が翻訳くさくなってしまっています(汗)
韓国語で書くときは、なぜか主張が強くなります。
「かもしれない」 「と思われる」 「だそうだ」 はあまり使わず
なぜだか、直球勝負です。
韓国語で表現するときは、なんかそうなっちゃうんですよね。
日本の方には、ちょっと暑苦しく押し付けがましい文章かもしれませんね。(← あ!日本人に戻った~!)
(えみこ)
「移住女性としての私が望むこと」
先日高敞多文化家庭センターが主催するキャンプに参加した。
野外体験を兼ねて行われたもので約70名の参加者があった。
その晩、20名ほどの女性達のため、専門の講師を招いてのセミナーがあった。
女性たちの出身国は日本、中国、フィリピン、モンゴルと多様で、
年齢も20代前半から60代までと、実に幅広かった。
講師は女性たちを国別に分けて、生活を元に演劇を作るように指導した。
あるグループは厳しい義母に涙する嫁の姿を、
またあるグループは、我が儘で自己中心的な夫に対して失望する嫁の姿を表現した。
このキャンプに参加した女性たちが悲惨な実生活を送っているわけではないので、
誤解無きようにお願いしたい。
1泊2日のキャンプに出かけられる農村在住の外国人女性というのは
比較的安定した生活を送っている人達だ。
この暑い季節、唐辛子の収穫に追われて
外出もままならないようでは参加もできない。
外国人の彼女たちが実生活で体験したことや、友人から聞いたことを総合して、
演劇用に脚色したものが、作品になっただけである。
日本人グループはそのセミナーの中では韓国居住歴が長いグループだった。
1990年の韓国は今とは相当違っていた。
韓国人に先進国と見られている国、日本から来たからこそ経験できたことを素材として演劇を作ってみた。
電化製品があってこそ家事ができると考えている日本人嫁に、
義母は昔風の家事を強要するという内容のものだった。
講師はそれらの演劇を利用して、問題解決の方法を提示した。
考え方、ものの見方の多様性を教える興味深いセミナーだった。
演劇の場で見たものは、誇張してあるとはいえ、
よく見受けられる家庭問題ばかりだった。
厳しい義母、頼りにならない夫、嫁の人間性を認めない嫁ぎ先の家族。
これらは嫁が外国人だから起こる問題だとは言い難い。
現在、多文化家庭の女性の中に家庭問題で苦しんでいる方は多く存在する。
問題の原因は外国人女性本人だけにあるのではないと思う。
もともとその家庭に内在していた家庭問題が、
外国人嫁を迎えることで大きくなっただけだ。
セミナーで教育を受けながら、
家庭問題に悩む友人の韓国人嫁の顔がいくつか目に浮かんだ。
結婚後の家庭問題、それも嫁ぎ先との問題は 同じ国の人間同士が結婚しても難しく複雑な問題だ。
その問題に韓国人女性は、今までどう対処してきたのか。
主として「女性の忍耐」を軸に
韓国人たちは切り抜けようとしてきたのではないだろうか。
しかしその選択肢は現在の韓国の若者達には受け入れられず、
彼等の多くが未婚の道を歩みつつある。
現在韓国で生活する15万人を超える外国人女性は、
韓国結婚問題の隙間を埋めるため流れ込んできたのである。
そしてその隙間は、韓国社会のひずみから生まれたものである。
様々な多文化家庭政策があるが、
長期的に見て移住女性の能力向上に比重が傾きすぎないことを個人的には願う。
職業訓練や言語訓練を移住女性自らが望んで求めているケースもあるが、
それは短期で終えるのが望ましい政策ではないだろうか。
何故なら移住女性に力をつけさせることで多文化家庭を維持しようという試みは、
「嫁さえちゃんとしていれば、家はうまくいく」
「女性に能力があれば嫁ぎ先でバカにされない。」
「女性さえ我慢すればすべて良くなる」
というある時代の韓国女性が持ってきた悲しい思想の延長にあるからだ。
移住女性が韓国に来た目的は結婚であり、経済問題は二次的なものだ。
家庭の経済的責任を負わせるために、労働力として外国から買ってきた人力ではない。
多文化家庭政策は、あくまでも健康で幸せな家庭をつくる政策でなければならない。
外国人女性を構成員として受け入れた家庭が安定的に進めるようなバックアップをお願いしたい。
多文化家庭問題は、単に外国人である移住女性たちだけの問題ではないのだ。
韓国の社会構造に起因する問題だ。
韓国では、家庭問題は女性の努力で乗り越えて来たのだと、
同じ方法を移住女性に求めないで欲しい。
移住女性が韓国文化を理解し実践することが大事だとはいえ、
文化の中には時代と共に淘汰されるものもある。
韓国が大量の移住女性を受け入れるに当たっては
当然韓国文化の変容をも覚悟しなければならない。
移住女性たちが持つ多様な文化が韓国に広がっていくことも認容しなければいけない。
移住女性に対し、韓国伝統的家庭観への従属を求める前に、
韓国人自らが、家庭に対する意識を変える努力が必要であると思うのは過ぎた願いだろうか?
10年以上の月日を韓国で過ごした私から、韓国人に願うことは一つ。
もし移住女性である私を援助してくださるというならば、
私の目に幸せで暖かい韓国人の家庭を沢山見せてくださいということ、それだけである。
移住女性は、どんなに増えても、現段階では社会のマイノリティなのだ。
韓国社会の大多数を占める女性達の幸せでなければ、
結局、移住女性のレベルもそれを超えることは難しい。
韓国女性全体の満足度の向上、底上げこそが、移住女性の向上にも繋がる。
社会は切り離されたものではなく、相互関連性を持っているから。
移住女性と、韓国人女性がともに幸せになることなく
片方だけ、幸せになることはありえない。
どうかまずは韓国人であるあなた方の家庭を、幸せなものにしてくださいと思う。
私にとっては長期的に見たときそれが最高の移住女性に対する援助に思えるのである。 (えみこ)