市場でのコミュニケーション2012.4.16
先日、田舎の市場の取材をした時
思い出したのですが
私が韓国に住み始めた1990年代の後半、
まだ韓国の地方都市には
大きなマートというものがそれほどありませんでした。
コンビ二も大都市にはちらほらありましたが
地方都市にはまだまだって感じでした。
とにかくその時代に田舎で買い物にいくことは
「市場」に行くことでした。
私は韓国で生活を始める前に
ある程度の韓国語はマスターしていたのですが
「主婦として使う韓国語」というのは
実に「教科書に書いてある表現」では足りません!
当時は「結婚移民のための韓国語」なんてものはなかったので
あるのは留学生のための会話のようなものばかり。
日本では私は専門の精肉店じゃなくて
スーパーで肉の種類と重さをみてカートに放り込んで買っていました。
しかし韓国で市場の肉屋に行くと
「豚肉1グンください(600g)」といっても
すぐに肉は出てこないのです。
まず店主が
「何を作るんですか?」と聞きます。
こっちは「チゲ」だとか「煮込み」だとか「焼肉」だとか
調理法を言わないと肉を選んでもらえません。
これでも終わりません!たとえば「チゲ」だというと
「脂身があるのがいいのか?ないのがいいのか?」
などと
聞いてくれます。
そして
「こまぎれに切ってあげようか?
そのまま持っていくか?」と
聞いてくれるところもあります。
もっと親切なところだと、
「一回分ずつビニールに分けてあげようか?」
まで聞いてくれるところがあって
日本で「豚肉300グラム」をスーパーにおつかいに行って買うのとは
えらく違っていました!
ものすごく細かいコミュニケーションが必要だったのです!
最近では韓国にも大きなマートがたくさんありますから
そうでもないでしょうが。
当時はそういうことがよくありました、、、
「韓国むかしばなし」
初級の韓国語教材には
こんな場面があったような気がします
いや、これになると中級かな
ー服屋でー
えみこ : こんにちは
服屋のアジュンマ : こんにちは いらっしゃい
えみこ : これ着てみてもいいですか?
服屋のアジュンマ: どうぞ。 あそこが試着室です。
えみこ :これよりワンサイズ小さいのありますか?
服屋のアジュンマ: はい ありますよ。
これです。 どうぞ 着てみてください。
えみこ :ちょうどいいです。 これ頂きます。
服屋のアジュンマ: 8万5千ウォンです
えみこ : すこしまけてください
服屋のアジュンマ : じゃあ8万ウォンにしてあげますよ。
えみこ :ありがとうございます。
服屋のアジュンマ :またどうぞ
実にありがちな 会話例ですが
実際にこれを韓国の田舎で使うとなると
付け足したり、省いたりしないといけない部分がたくさん出てきます。
まず田舎の市場の服屋だの小売店に
「試着室」というものを設置しているような
気の利いた店が少なかった!
それでもどうしても着てみないと買えないというと
アジュンマが
「どうしても着たいんだったら、
あそこの机の影で着てみたら?」
とか、それもないときは
一緒に行った連れとか、店のアジュンマが
大判のスカーフを広げている裏で
こそこそと着替えて確かめるとか
とにかく「試着が当たり前」なんて雰囲気がなかったのです。
そして「サイズが合わない」などと口にすると
(日本人は肩などにゆとりを持たせて服を着ますが
その当時の韓国人は
「服は着心地よりも、見た目が大事!」という
意識が徹底していたのか
試着した本人が「きつい」と言ってるのに
「そんなことはない!」とか
「それ以上大きなサイズを着ると
見た目がブサイクだからそれにしろ!」とか
「そのうち生地が伸びる!」
とかとにかくすごく強く勧めます!
そして韓国の市場では『値切り交渉可能」という意識が
日本人観光客に強く根付いているのですが
大都市の外国人観光客が多い店はそれなりに対応してくれるでしょうが
当時でも地方ではすごーく嫌な顔されましたね。
最近では市場で値切るのもホントに難しくなりました。
野菜の量を多めにいれてくれるということはあっても
『お金を引いてくれる」のは特に。
だから「まけてくれ」なんて軽くいった日には
店主が「この品物は!晩の12時にソウルの東大門まで行って!
寝ないで持ってきたもんであって!
全然高くなんて売ってない! ほらこれみろ!
これが原価だ! こっちも一生懸命勉強してるんだよ!」と
その値段で売る根拠を店主が
一生懸命説明し始めたりするのです。
しかも、田舎の店にはなぜか「店の人」ではない
店主の親戚であったり友人であったり
なんだかよく分からないけど
、「店の人」ではない女性が
わんさかと たむろしていることが多いのですが、
その彼女たちがかしましい!
「こっちのほうが似合う!」とか
「それは太って見える!」とか。
この人たちは、ずーっと店にいて
ご飯も一緒に食べて、客の品定めをして
そしてその客が出て行ったら
「あれはどこのだれそれの親戚の三番目の嫁で、、、」
という噂話が始まります。
「なんでお金はらって、
買い物してこんな気分の悪い買い方を??」と
思うようなことがいろいろあります。
21世紀なのに、いまだに韓国の田舎ではそういうことがあります。
そう思ってるのは私が日本人だからじゃなくて
若い韓国人のママからもそういう話を聞きます。
韓国も近代化近代化といわれてのですけど
この人たちのふかーい部分はそれほど「近代化」なんてされてなくて
それがまた「いい味」を出しているので
私はそれでいいのではないかと思います。
先日も郡の中心地、郡庁のまん前の交差点で
男女の痴話げんかを目撃しました。
女性が男性の頬を「バシッ」と殴って
罵り罵り罵り倒しました!
いったい何やったんでしょうか この男性?
カメラを出そうかと思ったくらいです。
先日、ソウルのまきさんの家に行った折
ソウルのバスターミナルでも同じような場面を目撃しました。
それは男の子が女の子を罵っていました!
「何考えとるンや!
言いたいことがあったらゆーてみい
こらあ!」
と。彼女は何も言わずうつむいていましたので
私は 「新しい彼氏ができたのでは、、、????」と
邪推を残してその場を立ち去りました。
韓国には濃いコミュニケーションが
まだあちこちに残っています。
私が当事者になってしまうと
「うへえ」と思うこともあるのですが
これがやっぱり「韓国の元気の素」だよなあと
思うので、なくなって欲しくないものの一つでもあり