そうだ!葉っぱを売ろう!(2)2012.4.3
実はこの本で使用されている口語はですね
かなり濃い「阿波弁」で
これを徳島以外の方が読んで
その意味分かるのかな?と思う箇所がちらほら。
でも徳島育ちの私には「ああ!そうそう!そーなんだわ!」 と
腑に落ちる表現ばかりで
ますます嬉しくなるという本でした。
たとえば「とても」 「たいへん」 「すごく」など
意味を強調するための言葉がありますが
これは徳島ではひとこと
「ごっつい」です。
この本の口語では
「すごいなあ」は「ごっついなあ」
「とてもおおきい」は「ごっつい大きい」です。
「ごつごつ」 や「ごつい」にあらわされるような「かたさ」の意味はなくて
「ごっついちいさい」
「ごっついかわいい」 などとも使われます。
日本の地方在住者は
すでにバイリンガルと言ってもいいのでは
ないかというほど、
生活で使う言葉に「標準語」との隔たりがあります。
「ないでないで」(阿波弁)
「ないじゃないの」(標準語)
「あるでないで」 (阿波弁)
「あるじゃないの」 (標準語)
果たしてついてこれるでしょうか?
また登場する山間部のおばあちゃんたちの話が面白い
たとえば横石さんが
商品の「バーコード」の説明をしていると
おばあちゃんたちは『婆にコードをつける!」
つまり生産者の私たち婆さんに番号を振ることだと勘違いし
爺さんの「ジーコード」もつくらねば
という笑い話がおこったり。
私には楽しい本でした。
これは出身地の人間だから特に楽しいのかもしれません。
1958年徳島市生まれ
1979年 徳島県農業大学校園芸科卒業後
上勝町農協に営農指導員として入社
横石さんのお父さんは徳島県の公務員。
息子さんも公務員にさせようとした。
県庁内部にいるお父さんから見た楽チン入庁ルートが
県の農業高校と農大を卒業しての
農業改良普及員という職だった。
しかし楽チン採用のはずが
あれれ? その年だけに限って
農業系の県庁職員の採用がなく
とりあえず田舎の農協に入って待機しとけ
ということで
「数年山に勉強に行くか」と
横石さんは上勝にうねうねと車を走らせて
出勤することに。
結局横石さんが「腰掛け」のつもりで入った上勝農協が
一生の職場になった。
なにしろ横石さんが着任した当時の上勝は
人口が一番流出していた時期で
当時の地区の産業は、
みかんと林業と建設くらいしかなく
雨が降ると仕事がない。
だから雨の日には
男衆の何人かは朝から一升瓶片手に
役場や農協に来てはくだを巻いていたという
「補助金が少ない」とか
『国の政策が悪い」とか。
なにかをしてくれることを、人に期待するばかり
田舎特有の負け意識
それが、そのころの上勝町には充満していた。
女性はもっと状況が悪く、
定期的収入を得る道などその町にはなかった。
仕事はない、金もない そういう人たちが
「暇」をもてあましていると、どうなるか
人の悪口をずーと言っている姿を横石さんは見て
「ひま」が続くことが人間にとってこんなに悪く作用するのか!という
思いを抱いたそうだ。 (今の韓国農村とそーっくりです!!)
だから母親たちの子供たちに対する脅し文句が
「あんたも勉強せんかったら、
ずーっとこの町にすむことになるんでよ!」
だったそうだ。
横石さんは
自分の生まれた町の悪口をいい、
ここにおったら駄目になるとみんなが思ってる
その状況をなんとか打破したくて
「みなさん!今のままではだめです!
この上勝町でなければできないようなことをやりませんか!」
と農家の集まりで発言したところ
もうそれはボロクソに怒られたそうだ。
「若造が!お前に何が分かるか!」
と、町から追い出されそうになったそうだ。
組合長が「まあ、まあ」と間に入って収めてくれたそうだ。
そして、横石さんが上勝に赴任してから二年目
上勝のミカンが寒波で全滅する。
横石さんは
「なんとかせないかん!
すぐに現金収入になるものを」と
考え始めた。
とりあえず横石さんは農家が家庭用に作っていた野菜を集めて
徳島中央卸売り市場へ運ぶ。
そこで、産地部長だった立石さんという人物に出会う
横石さんが上勝のミカン全滅の大変な状況を話し、
立石さんは親身になって相談に乗ってくれた。
市場で売れるもの、どういう形で、どんな品目でということを
『売る人」の立場から詳しく教えてくれたそうだ。
そのあと市場の指導で「あれつくってみい」「これはどや?」と
いろんな実験を重ねて、ときには大失敗もし
上勝の人たちは今まで作ったことのない作物が
たった一ヶ月で現金収入になったことに驚いた。
ミカンや米には一年が掛かる。
彼らは数ヶ月でお金になる作物があるとは思ってなかったそうだ。
当時20代前半だった横石さんはこの時期むちゃくちゃ働いて
なんとか上勝の農家を黒字にしようと努力した。
徳島の市場より大阪のほうがいいと分かれば
大急ぎで大阪にいくフェリーに乗り込む
信号無視で警察にとめられても
「お願いします!フェリーにのらんとあかんのです!」と
拝み倒す。
また、それを許してくれるのどかな時代だったという。
その頃、横石さんの父上は「もう戻って来い!県庁職員に!」と
何度も説得したらしいが
上勝の農業育成に燃えていた横石さんは
頑として戻らなかった。
そうやって大阪の市場に品物を届けた帰り
ある寿司チェーン店で、横石さんは食事をしていた
向こうに可愛い女の子が座っている
こっちも二人連れ、あっちは三人
声をかけてみようかとか何とか言ってた時
その中の女の子が
「これ、かわいー、きれーね」 と言って
寿司のつまものだった「紅葉」だった。
指でつまみあげて、やたらと褒めてハンカチに包んで彼女は持ち帰った。
「紅葉?」
こんなもん上勝の山になんぼでもあるわ!
そうだ! 葉っぱを売ろう!
横石さんは電撃に打たれたように
そのひらめきを感じ取っていたそうだ。
横石さんが『葉っぱ」を売ろう! と思ってからがまた大変で
いつものように
「あほか」といわれ、
『葉っぱがお金に化けるか、 たぬきじゃあるまいし」と馬鹿にされ
でも本当にこの「葉っぱ」ビジネスはものになった。
なぜ『葉っぱ」かというのにも横石さんなりの理由があった
それは『軽いから」
女性たち、特にお婆ちゃんたちでも扱えるではないか!
あの人たちにお金を作る手段を!と彼はずっと思っていたから。
出荷してください
葉っぱを集めてください
という横石さんのお願いに答えてくれたのも
おばあちゃんたちだった。
しかし成功の裏には横石さんの
マーケティングがあった。
自分の財布をはたいて高級料亭に行き
「つまもの」が使われている料理を食べてくるということを繰り返した。
だれも教えてくれないから。
家族には内緒。
横石さんは通風でパンパンに膨れ上がった。
二年くらい経ってなじみになったころ
板場に入れてもらえるようになったそうだ。
全国の卸売り市場を回って
どういう「つまもの」だったら売れるのか?ということを
調べて回った。
そしてもちろん『売り込み」も欠かさない。
横石さんは上勝のおばあちゃんたちと、市場をつなぐ橋になった。
市場でこれがいる! ということが分かった横石さんは
すぐにお婆ちゃんたちに手書きのファックスを入れる
そしてガンガンたきつける
「出陣!!一日売り上げ100万円を
めざしてがんばってくださーい!!」 と。
そういう生活をしていたので
横石さんは自分の子供が
そろそろ中学生になるかという時期に
『銭がない!』ということになった。
いままで心のひろーいできた奥さんがすべてを賄ってくれたのだ。
しかし、これから先は、、、いくらなんでも難しいなということが分かり
横石さんは
上勝農協に辞表を出した
しかし!おばあちゃんたちからの
『辞めないで横石さん!嘆願書」がすぐに集まる
上勝に絶対必要な人です!!
あなたは上勝の太陽です!
結局上勝の人々は一丸になって横石さんを引きとめ
どういう条件だったらここに居てもらえるのか? を検討した
みんなの意見は 「おってくれるだけでええ!」
(いてくれるだけでいい!)
そして横石さんの奥さんが決めての一言
『こんなに大事にしてくれるんだったら、やったら?」
横石さんの処置は役場への転籍ということになり
給料は一気に上がったそうだ。
ということで横井さんはまだ上勝で働いているそうだ。
この本の帯の文章は村上龍が書いている
『横石さんは現代の二ノ宮尊徳だと思う
重要なのは『町おこし」ではなくて
その土地に生きる一人一人が目標と生きがいを持てるかどうかだと
身後に証明してみせた』
私えみこは現在たまたま、二宮尊徳伝を読んでる途中でした。
二宮尊徳が領主に頼まれて
「この貧乏な寒村をなんとかしてくれ!」といわれて
10年で立て直した話を読んでいました。
その村の最初の状況は上勝とおーんなじ
オトコは酒瓶もって昼から博打
女は夫の甲斐性のなさを嘆きながら
かといって自分にもなんの経済力もない、学もない。
出るのはため息ばかり。
二宮尊徳は領主に頼んだそうです
「ここからしばらくのうちは、たいした年貢が出ないことは
了承してください。
ただ、こちらからお願いしたいのは
この村に一切の援助を出さないでください」
ということだったそうです。
その村は本当に10年でよみがえったそうで。
人は金があるから生きていけるのではない
自分が何かをできるという自信と
独立の精神によって生きていけるのです
ということを見事に証明した二ノ宮尊徳でした
村上龍氏による
「横石さんは現代の二ノ宮尊徳」だ
確かにそのとおりですね。
私はこの横石さんのストーリーを読みながら
「すごく幸せな方」 だなあ と思いました。
阿波弁で言うと
「ごっつい幸せな方」 です。
なぜごっつ幸せな方なのかを、つづけて書いていきます。 (えみこ)
徳島県上勝町の葉っぱビジネス「彩」の
仕掛け人、 横石知二さん(よこいし ともじ)のことに
ついて書き出します。
この本の中に書かれていることばかりですが。