ことばは届くかー2012.8.21
イキナリ豪雨に見舞われたり
カンカン照りになったりのヘンな天気が
韓国南部でも続いています。
こんな天気だと、洗濯ものを干したままでの外出も
ままなりません。 まったく!
在韓日本人の私ですが
主婦としては
緊張の韓日関係よりも
洗濯物が乾くかどうか!のほうが
生活的にはずっと重要だったりします。
といっても、例の「独島は~」以来、いろんなことが
こんがらがって、光復節がすぎたというのに
まだいろいろな韓日間の言説が目に付きます。
日本人が韓国に
はっきり目を向け始めたということなのでしょう。
韓国からの「独島は~」は
べつにいまに始まったことじゃないのだから。
もうずーっとずーっとこれだったんですから。
といっても、両者なんかボタン掛け違っている、、感がぬぐえません。
韓国と日本の目に見えない何かの違い
それを言語化しようとした試みがあります。
2004年に出版された本です
フェミニズムの旗手たちによる往復書簡という
ちょっと変わった形態の本です。
この本は「韓日の違い」を浮き彫りにするための
本ではなかったはずなのです。
韓日の女性学者が、言葉を尽くして
書簡で討論した結果
「ことばにしにくい韓日の違い」が
浮かび上がるという
おもしろい結果になっています。
二人の出会いは、国際人類学会の女性部会
冒頭の上野千鶴子さんからの問いかけに
こんな文があります。
韓国は日本よりもずっと階層間の格差の大きい社会です。
エリートたちの目はまっすぐにアメリカに向いていますし
経済力があれば子供をためらわずアメリカの大学に留学させます。
中略
アメリカの大学で博士学位をとってきた彼らは
祖国の大学の教壇に立ち
アメリカ直輸入の学問を講じます。
中略
学問研究と祖国の現実との差に
足がすくまないのだろうか?と私は思ったものでした。
中略
あなたの勤める延世大学社会学部教員のうち
英米語圏の学位保持者は80%を超えるそうですね。
こんなかんじで
上野さんはさらりと
韓国と日本はまずこんなに違うわけだけど、、、
と書き始めます。
「何か」を討論するときに
その「何か」がその国でどう扱われているのか
その「何か」に対するイメージはその国ではどうなっているのか?
それを知らなければ、その違いがあることを
認識しなければ、
お互いが、一体何を話し合っているのか??最後まで
分からずに終わってしまいます。
現在の「竹島」を巡るやりとりを見ていると
日本人と韓国人が同じ土俵に立ってないのに
同じ土俵に立っているとの錯覚があり、
また、言葉の翻訳機能だけがついているネットなんて
ものがあるために
さらにややこしいことになっているような気がします。
この本、ほぼ10年前に書かれたものですが
この期間に溝が埋まったか?というと
あんまり埋まってないような気がします。
今読んでも、結構いけるので
ここに紹介しておきます。
個人的には上野千鶴子氏が
言っていることのこの部分に共感します。
英語で表現しない限り
非英語圏の研究者の業績は数のうちに入りません。
わたしたちのような言語小国民は
いやおうなくバイリンガルにならざるをえません。
中略
バイリンガルは資源です。
なぜなら英語では届くことの無い世界に私たちは
触れていられるからです。
様々なテーマを韓日の女性学者が扱い
それに対する自分の意見を明確に述べているというだけで
私にとっては大変面白い本でした。
彼女たちの出す結論に対しての好き嫌いはあると思いますが
「こういう風に考える韓国人が世の中にいる」と
いうことを知るだけでも、韓国に住む私にとっては
おトクな本だったといえます。
なんか 今の韓日緊張をみてて
「ま、そう熱くならずに、これでも一冊読んでみたらどう?」
みたいな感じですね。
(えみこ)