無理!2013.2.15
先日文庫本の上下巻を一気読みしました。
直木賞作家の奥田英朗さんの「無理!」
- 無理 下 (文春文庫)/文藝春秋
- ¥610
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これは帯に「一気読み必至!」とかかれてるんですけど
ホントに一気に読んでしまいました。
以下ネタばれあり!
ここには東北の地方都市に住む5人の人間が出てきます。
この五人は
○社会福祉関係の公務員
○高二の女子高校生
○暴走族出身で、ちょっとやばい会社に勤めている20代の男性
○大型ショッピングセンターで万引き取締りの仕事をしながら新興宗教を
もつ独身女性
○県会議員に出馬しようと思ってる市会議員
なんですけど
この五人を中心に
今の日本の地方都市に見られる問題が
これでもか!これでもか!と
かかれます。
○地元の商店街はシャッター街になってしまい
郊外の大型ショッピングセンターだけに
人は集まる。
(内部で産地ごまかし。賞味期限ごまかしのあるショッピングセンター)
○その横にあるパチンコ店だけは
いつも満員。
人目につかないひろすぎる駐車場では
けっこうやばいことが起こっている。
○経済効率の悪いバスの路線は打ち切られるので。
その地域にすんでいる高齢者の足がなくなる。
○主婦の仕事っていっても、時給○○百円のものしかない。
それでもお金のほしい主婦は、、、昼間の2時間を利用して
援助交際に走る。
○外回りだという言い訳の聞く公務員が
昼間その援交主婦を買う!
○この町にいたところで、なんの未来もないと自分で
見切った学生たちは、都会への進学のため
ひたすら塾に通う。
学校は「優等生」と「不良」にしか居場所のない保育園になる。
先生に「敬意」を払う生徒は誰もいない
○ひきこもりのアニメオタクは
町で見かけた女子高校生を
拉致して「家で飼う!」
同居しているオタクの親は息子の家庭内暴力が怖くて
息子が離れに誰かを連れ込んでいることを知りながらも
何もいえず、二人分の食事を作り続ける。
○年金の入る年寄りを相手に、「検診で~す」の声と
ともに家にはいりこみ、公的機関と誤解させて
漏電防止の機械をうりつける団体
○「働ける」のに「働くのがいや」だから
生活保護をもらうために、小細工するシングルマザー
液晶テレビは市役所の人が来たら
押入れの中に隠す!
○低賃金で仕事をする人間が必要であるため
外国人が集団で居住している。
しかし彼らが社会の不安要素になり、抗争が起きる。
一応暴走族同士の喧嘩には
「ここまでならやっても良いっていうラインがあったのに!」
グローバル化でむちゃくちゃになる!
○選挙区にも、やくざさんにも
「シマ」とか「なわばり」とかが、一応あったはずなのに
どんどんその地縁血縁までが薄れてきて
「力のあるやつ」の天下になりつつある裏社会
ぜんぜん押さえが利かない。
○親の代からの議員の家庭でそだった二世議員
警察にも裁判所にも先代からの
「カオ」が聞いてたはずなのに
警察OBたちの天下り先として
ショッピングセンターの「顧問」だの「監査」などの
役割が振られて金の力で人がうごくため
どんどん地域に「親の代」からのカオが聞かなくなっている現状
義理人情はどこにいった?
○市会議員の家庭の中の、家庭崩壊
アル中とショッピング中毒の妻
などなど、、、、もう、これどうすんの?
という実に絶望的な未来のない姿が
これでもか!これでもか!と描かれます。
これを読んで公務員を見たら
「なんか裏でわるいことしてるんじゃ?」と
おももいたくなり
ブランドバックをさげてる主婦を見たら
「絶対ウリやってる!」と
決め付けてしまい
市会議員にいたっては
「裏で人にいえないことやってるに違いないし
愛人いるだろうし、
家庭は崩壊しているはず!」
と思い込み
暴走族あがりのお兄ちゃんがスーツをきて出勤していると
「絶対やばい仕事してる!」と思うだろうし
60前後の独身女性が、小金ためてる様子だったら
「きっとへんな新興宗教につぎこんでるんじゃ?」
ともう、人を最初っから悪く見そうで怖いくらい
いろんな事例がばばばーっとかかれてます。
そしてそれを笑い飛ばせないのは
現実に
こんなこと、すごく「ありそう!」だからなんです。
もう私の実家のあたりなんかも
商店街はシャッター街
そしてひとつだけでかいショッピングセンター
そしてそのショッピングセンター自体も
かなり熾烈に争ってて
営業時間だの、安売りだのでかなりお互い無理してる様子がみえるので
もう、この本のなかにかかれてることって
日本全国、「あるある!」と
思い当たることばかりなんです。
帯にもありました
「この本にはなんの希望もありません。でも面白い!」
うん、そのとおり、
ホントに。
で、、ですね。実に救いのない話で
ラストはこれがどう解決するのか?ということで
ある事件が起こるのですが
それが一体解決になるのか?というか
この問題に解決なんかあるのか?とまで思わされます。
一旦ラストにすべてが白日の下にさらされるのですけどね。
今の社会の流れから行けば
こういうことになってもぜんぜんおかしくない。
みんなが「経済効率」と「自分の気持ち良い」を優先して生きていく社会
でもそうなると、それはあんまり
「生活しやすい社会」ではない。
でもどこかで流れを変えることは出来ないのかな、、、
たとえば、この作品に出てくる人たちが
もしちょっと前にああだったら
こうだったら、、、この流れは変わってたのではないかと
思わされる部分がたくさんあります。
ショッキングな話ですけど
現代の寓話だなと、、、
いや、実話の域に入ってるのかな、もうすでに。
それが怖いです。
韓国も同じような事件はあるようです。