恵実子の書評

頭がよくなる絵本の読み方

백강 문정사랑 2010. 4. 3. 12:00

 

 

 

 

   頭が良くなる絵本の読み方

     西村健   講談社

絵本はこどもにとっていいらしい。
み聞かせると頭がよくなるらしい。

 

 それは、分かっている。 

 でも具体的に、どうやったらいいの?

 

   そんな疑問を胸に、

  2歳のお子さんを持つ西村さんというライターが、

 あちこちの読み聞かせ現場を取材した記録である。

   児童会館、図書館、出版社の出張サービス。
  読み手のなかにはプロもいればアマチュアもいる。
   演劇のように見せる語り手もいれば、
  聞こうが聞くまいが、淡々と読む人もいる。

  一言で読み聞かせといっても、それはそれは多彩なのだ。

    取材記はずんずんと進んでいく。

  その中で、あすか会という読書指導会が徹底的に取材されている。

 

 文章もその部分が特に熱いように感じる。

あすか会というのは、知る人ぞ知る有名塾らしい。

名門私立小学校への合格率が驚異的に高いという。

 

では、そこで何をやっているのか。

一冊の絵本を90分かけてじっくりと読むのである。

 もちろん生徒には書名が事前に知らされ、

  親子で一緒にその本を何度も何度も読んでおくのだ。

  対象は小学校就学前のこどもたちである。

  この主人公が、なぜそういう行動をとったのか。
  なぜその言葉を発したのか。

  指導者の小松氏は子供たちに聞いていく。
   簡単な答えでは通らない。

 自分の頭で考えた自分の言葉が、

   ここでは最高の賞賛をうける。

 

  こどもたちは、一冊の本に真剣に向き合いながら、
  いつの間にか、絵本の世界の住人になる。

 そして自分を主人公に投影し、その思考をたどるという
 高度なことまで難なくやってのけてしまう。

  その結果が有名小学校合格という実績になるらしい。


 

 しかし、彼らが読書をとおして得たものは、そこで終わらない。

 このあすか会の卒業生の後記が載っている。


 

  大学受験に際し、自分のやりたいこととを突き詰め、
 看護婦になることを選択した女の子の話がでてくる。

 その若さで、そこまで自分の生き方を模索できるとは驚きだ 。

まさに、人生の基礎が読み聞かせによって築かれたとしか言いようがない。

 

 これだけの密度の高い授業をするには、まずは教材となる
   絵本選びがなによりだ。

 あすか会の使用絵本リストが載っているのも、

この本の魅力のひとつだろう。

 しかし、読み聞かせの旅をしながら、著者も、そして読者で
 ある私も、だんだんと気持ちが動いていくのだ。

 

  ノウハウではない。絵本は楽しむものだ。

  余計な効果を期待して読んだのでは
   こどもは本嫌い一直線。

  読み聞かせとは、読み手と聞き手両方が、同じ感情を
  共有しあうふれあいの場なのだ。


 

   それが著者とともに、

すとんと落ちた着地点だろうか。

  絵本というツールはこれほどまでに、人の想像力を喚起し

   読むものに幸せをもたらす。

 

  私たちが子育てをする中において、

  どれだけありがたいものだろうか。

 

   幼いとき読み、そして子育てを通してもう一度楽しめる。


 

  そして、きっと次は、いつかやってくる孫育てだ。

 子供に読んでやれなかった人は、孫に読んでやればいい。

 そのときそのときできっと感じるものが違うはずだ。

  頭がよくなるのは副産物、


 

 結果として、そういう題名がついているが


   内容から感じる本当の題名は
 「幸せになる絵本の読み方」じゃないだろうか。