先日これを読みました。
- ジョーカー・ゲーム/柳 広司
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こっちは続編でしたが
これもあわせて読みました。
- ダブル・ジョーカー/柳 広司
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これまた面白かったですねえ。
第一次世界大戦以降の世界を舞台にして
日本の陸軍で秘密裏に要請されたスパイたちの物語。
作家の柳さんのインタビューを読むと
「ジョーカーゲーム」はフィクションだそうですが
戦前に陸軍がスパイ養成期間を抱えていたというのは本当だそうです。
- トーキョー・プリズン (角川文庫)/柳 広司
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この本を執筆するための取材中に
そういう記述のある資料にぶつかったそうです。
軍隊というのは
国のために「自分の命を捨てる、敵を殺す」ことが
出来る人間を養成しなかればならない機関です。
しかし、この陸軍内に作られたスパイ養成機関の「D機関」での掟は
「殺人、および自殺は最悪の選択肢」ということで
そこでは『殺さない、死なない」が標榜されていたそうです。
ここまでは本当のこと。
あとは作者の柳さんの創作です。
漫画にもなっていました。 やっぱり日本ですねー。
漫画の雰囲気と原作の雰囲気がとても合っていて
これは漫画化大成功では? と思いました。
絵になってより生き生きとしています。
- Dの魔王 1 (ビッグコミックス)/柳 広司
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本人もヨーロッパで長年スパイ活動をして来た経験があり
彼が日本にもたらした国益という実績の前には
陸軍のお偉方も口がだせないという実力者。
「ジョーカーゲーム」では
彼が自分の後継者となり手足となって動くスパイを養成していく姿を中心に。
二巻目の『ダブルジョーカー」では
世界各国に散っていったそのスパイたちの活動と生死を描いています。
もともと「D機関」に呼ばれた若者達は
それぞれに卓抜した能力の持ち主でした。
特に記憶力に関しては皆が見たものを一瞬で記憶する
『写真記憶」の持ち主のようです。
そうでありながらも、生まれに何らかの難点があったり
どうしても時代や組織に馴染めないもの。
信じるものが「自分」しかないものが集められ
さらにふるいに掛けられます。
そしてなにかの「とらわれ」があるものは
それに気が付き自分から組織を去っていきます。
なぜそういう人間が集められたかということには理由があります。
スパイ活動のなかで、与えられた条件というのは
いつも不確定だからです。
昨日まで協力者だった人間がいつ寝返るか分からない。
情報自体も本当に正しいのかどうかわからない。
自分をスパイとして派遣した国の情勢もどう変化するかわからない。
そうなると
「徹底的に自分の頭で考える」
ことが出来ない人間は
その中で生き残ることができないのです。
「D機関」は陸軍の中にありながら
「陸軍の人間」を使おうとしませんでした。
結城中佐の言い分は
「天皇制にとらわれている」 人間は使えない。
しかも「殺人と自殺は最悪の手段」と言い切る結城中佐が
陸軍の中で煙たがられないわけがありません。
陸軍の軍人にとっては「天皇とお国のために死ぬこと」こそが
最高に価値のあることだったのですから
この「D機関」では天皇制さえも、思想ディスカッションの対象の一つでした。
イデオロギーとしての天皇制としての価値しか
扱われることはありませんでした。
「自分の頭で考えるってどういうこと?」
を一つのテーマにしながら
物語としても最高に面白く、一気に読ませてくれる作品でした。
私は「終わらないでー!!」 と思いながら読んでいました。
また「海外生活している人間のアイデンティティ」という問題にも触れていました。
スパイたち海外派遣されますからね。
日本以外の生活が長くなった私にはひとごとではありません!
彼らがその国で情報網の基盤を作る間
10年.20年時によってはもっとながい期間、本国と音信普通のまま
潜伏を余儀なくされる場合があります。
スパイに『祖国のためにこの任務を負っている」という
自負があったとして
もしその当の国王が亡くなってしまったり、
また、自分自身が母国に悲憤を感じ、思想転向してしまう
可能性もあります。
本心を明かす相手もケアしてくれる上官もいない年月
スパイたちはどうやって自国に対する信念を守っていくのか。
その問題に対して、著者は「ロビンソン・クルーソー」の著者である
ダニエル・デフォーの話を挿入しています。
このデフォーこそが、イギリス「アン女王」のスパイであったということが
後年の資料から分かっているそうです。
スパイ小説として読む!「ロビンソンクルーソー」!!
デフォーは南海の無人島に漂流した
ロビンソンにこんなことをさせています。
無人島で聖書の購読と祈祷
パン作り。
パイプをつくりタバコをすう。
ヤギの皮でズボンをつくり英国風の服装を整える。
『フライデー』と名づけた原住民の青年に自分を
『ご主人様」と呼ばせ
主従関係を求める
などのことです。
これはただ生命維持のためというより
「イギリス人」としての内面を保つための行動です。
イギリス人としての役割に自分を同化させるための儀式のようなものです。
この『ロビンソン」の話は
まさに、スパイとして敵国に潜入した人間が
その国の人間と同化することなく、
スパイとしての役割を全うしていくための寓話となっているというのです。
ふかーいテーマも面白く読ませる。
エンターテイメントとしても最高に面白い本でした! (えみこ)
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