こんなこと、あんなこと

我が家のご先祖さまは(2012.4.29)

백강 문정사랑 2013. 9. 2. 19:24

今朝の我が家の食卓での話題です。

 


 

 長男「お父さん、うちの血統って全州李氏でしょう。」


 

 夫「そう、だけど全州李氏が一体何人いると思う?


 

  そんな大雑把に全州李氏で終わらせてはいけない。


 

  我が家は全州李氏の中でも、敬寧君派だ。もしくはその一代下の名前をとって


 

  牟陽君派だ。ちゃんと覚えておくように。(敬寧も牟陽も名前ではなく号です)


 

 自分の血統を知らないなんて、これ以上恥ずかしいことはないんだから。」



 

と、夫が息子に薫陶していました。

 

食後厚さ5センチはあろうかという分厚い族譜を三冊とりだして


 

  「ほら。うちの家系は ここからこう分かれて、


 

 その祖がこの方で、この方のお墓は現在何とか地方にあって」


 

と解説を始めました。


 

 

 それが終わると聞かなきゃいいのに長男が


 

 「お母さんの実家のルーツは?」とか聞くわけです。



 

 私は祖父母以上の先祖の名前を諳んじることはできません。


 

 日本の実家に帰ればご先祖の記録はあるのですが

 

 4代前は誰で5代前は誰ですらすら言うというわけにはいきません。


 

 うちの夫はなんと14代前まで暗記しているそうです。



 

 こんな私に夫は


 

 「根のない民、どこから出たかも知れない人と自分は結婚してしまった。」


 

 と結婚当初は本気で


 

 最近は冗談で嘆いたりします。



 

 この先祖に対する関心の高さについて、韓国人男性みんなそうか?と


 

 いうと相当個人差があると思います。


 

 うちの夫が1970年生という世代で長男ではないにも関わらず14代前まで


 

 諳んじることができるというのは、かなり先祖に関心の高い方だと思います。


 

 夫の兄である長男さんだとこの方々のお名前を全部漢字表記できると思います。



 

 韓国の先祖崇拝の厚さは有名です。その現れの一つが祭事がです。



 

 私の嫁ぎ先は現在でもこの祭事を重要視しています。



 

 私は長男の嫁ではないので気楽なもんですが、


 

 この祭事のお手伝いに関わって、上の嫁さん達が喧嘩する姿とか、


 

 嫁にいった娘達から「実家の祭事をこんな風にしかできないのか」と文句をつけられてる兄嫁の姿とか


 

 「魚の向きはこっちじゃなくて、あっちだろう」とか家ごとに違うしきたりを押し付けられたりして怒られてる姿とか

 

 和気藹々とはとてもいえない、特に女性が心中我慢している姿を目にして、



 

 「嫁の負担が大きいなあ、生きてる人がこんなに不満たらたらでやってたら


 

 先祖の方ってそう嬉しくなさそう、これって悪いけど生きてる人の自己満足入ってるんじゃあないのかなあ


 

 男の人の自己マンの為にやるんだったら祭事の準備も買い物も料理も男がやればいいのに」


 

 と思ったりしました。



 

 そういう風には考えず、韓国人嫁が誰もやらない中


 

 一生懸命に立派に祭事をこなしているような日本人のお嫁さんもちゃんといますが、


 

 私はそういう風にはとても思えなかったです。


 

 

 祭事のシステムが生きてる人間を不幸にするのなら、システムの変更を考慮した方がいい。


 

 嫌々祭事の形だけ整えても、結局は精誠どころか不満の念が先祖に送られて、


 

 ご先祖様が喜ばないのではないかなあと思いました。



 

 生きてる人の幸せが、ご先祖の喜びに繋がるんではないかと、私が考えているせいですが。


 

 私もまだ死んでみてないので、ほんとに死んでみたら


 

 「韓国式に豪華に祭事してくれないと安らかに眠れないー!!」とか言い出す可能性もありますが。

 


 

 

 とにかく祭事は準備が大変でお金も掛かるので


 

 やればやるほど楽しいというより 


 

 嫁の間では「あーあ、またもや祭事がやってくる」って感じでした。


 

 


 

 祭事を修練とか鍛錬の目的でやるなら回を重ねた人ほど


 

 人格が練れてないといけないはずですが、


 

 長いことやった人ほど、擦れているというか、疲れているようでした。



 

  我が家の長男の嫁は、糖尿と肥満と更年期障害と、膝の疼痛とあと何だったけ

 とにかくストレスが多くて体があっちもこっちも悪い人です。



 

 祭事には一つ一つ意味があって、それに関心をもって準備できれば


 

 それも楽しみになるのでしょうが、準備でやること自体ががすごく多くて、


 

 私は「祭事ってすばらしい、これこそ韓国の文化が流れている」みたいな文化記事を目にする度


 

 実は「お前実際やったんかい!」と


 

 喧嘩売りたくなってしまう衝動をおさえられませんでした。



 

 祭事には「心をこめてやらねばいけない」「精誠を尽くす」という前提があります。


 

 しかし精誠を尽くした行為は、あくまでも内面の発露の結果であって


 

 どこからどこまでが精誠を尽くした行動だという線引きを外部の人が正確に施すことは出来ません。



 

 例えば以前私は袋いっぱいの米を渡されて


 

 「はい、この米の中から形のいいものだけ取り出してね。割れてるのとか欠けてるのとかは

 

 祭事に使えないから」ということで 5時間くらい米の選別をしたことがあります。

 

それが終わったら今度は豆が渡されました。


 

 私は「やりすぎだ、、、、」と思いました。


 

 これは一家庭での祭事ではなくもっと大きい単位での祭事でしたが。




 

 ここまでのことはめったにありませんが、


 

 まあいろいろ嫁にとっては大変なんです、祭事。



 

 だから祭事自体を完全に業者に委託している家庭もあります。


 

 そこまではしなくても料理が大変なので「祭事セット」を購入して盛り付けてるだけの家もあります。


 

 一年に4回くらいやってくるはずの祭事を一番近くに亡くなった方の命日に合わせて


 

 一年に一度だけやることにしている家庭も多くなりました。



 

 我が家は80代の義母が「自分が生きているうちはそんな雑なことはしたくない。


 

 ご先祖の命日に合わせてお膳を捧げたい」と仰るので、


 

 いまだに一年に4回、それに加えて正月と盆


 

 合計6回の祭事を行っています。


 

 

 しかし80代の義母はもう体が動かないので


 

 結局は嫁達が呼ばれて祭事の準備をやっているのが現実です。


 

 そして嫁達の心は穏やかではない、、、


 

 。



 

 韓国では先祖崇拝、祭事ということが常識的に重要視されているので


 

 それが出来ない嫁や放棄する嫁というのは「いい嫁」ではないとみなされます。


 

 嫁である以上は当然の義務だとして女性に降りかかって来ます。


 

 

 祭事をしてあげたい気持ちはあっても、


 

 子供の教育に手間もお金も掛かるこの韓国で

 母親達も精一杯生きています。

 そして母親に対する社会的要求もとても高い。

 「お母さんだったらこれくらい子供のことを考えるのが当たり前だ」という

 高いハードルが設定されています。



 

 韓国の非婚率が急上昇するのは、当然のことだと思います。


 

 教育では「利益を最大化する方法を最短で探し出せ」と言っているのですから


 

 自分の利益を最大化する公式を自分に当てはめたら


 

 「下手な結婚はするべきではない」という解がでてくることでしょう。


 

 私は現在地方部在住ですが


 

 結婚しない30代の韓国人がすごく身近に出てきました。


 

 阿部寛の「結婚しない男」は韓国版にリメイクされて好評だったそうです。

 

 

 


 

 私の日本の実家も父が長男でしたので母の負担は大きかったですが、


 

 どう考えても韓国の嫁ほどの大変さではありませんでした。




 

 ご先祖に感謝したい、ご先祖を慰めたいという気持ちがあるなら


 

 一年に一度どかーんとご馳走つくるよりも(それも文句たらたらで)


 

 毎日ご先祖を思ってお線香をあげてあげたほうがいいんじゃあないの?


 

 命日は命日でちょっと気張ってなにかお捧げしてもいいと思うけど。


 

 死んだ人に聞いてみるのが一番だけど、聞けないから想像だけど。





 

 と思い、私は自宅の台所に簡易仏壇セットをつくり、毎朝ご先祖にお線香をあげています。


 

 夫も「あの喧嘩まみれの祭事より、日常の先祖供養のほうがずっといい」と言ってくれるので


 

 二人で、毎朝ご先祖にお礼を言ってから一日をはじめています。


 

 簡易仏壇の写真をアップしてもいいのですが


 

 位牌がなにしろ私の手書きなので、、、、 とてもお見せできるような代物ではありません。


 

 嫁ぎ先での祭事はこれからも手伝っていくつもりです。


 

 どうせそれほどの働きはしてないのですから、 (しかし長男の嫁というのは、ほんとに大変です。)




 

 そして私は生きてる夫と夫方のご先祖に向かって



 

 「四代前の先祖の名前さえ知らないような根無し草ですみませんねえ、


 

 だけど、私は日常的にご先祖に礼を尽くして感謝したいと言う気持ちだけはちゃんと持ってて


 

 しかもそれを実行に移すような有り難い良いお嫁さんなのよ。


 

 これからあなたの家系が家運向上していくようなことがあった場合


 

 これはあの日本人嫁えみこのおかげであるとして


 

 ちゃんと系譜にそのことを記録しておくように!」と申し渡しました。




 

  そして毎日夫婦で「ご先祖様、ほんとにありがとうございます。」と手を合わせています。


 

  韓国人と日本人が結婚して生活して10年、


 

 とうとう先祖崇拝も日韓混合になってしまいました。  



 

 私、結婚当初は、韓国に嫁いだのだからこれからすべて韓国式に生きていくことになるのだろう。


 

 私がすべて受け入れて譲歩して健気に自分を削って生きていくんだろうとか


 

 結構本気で思ってたんですけどねえ。

 

  全然違いました。 (;^_^A   (えみこ)