えみこのひとりごと(2010年~)

俺が育てた2012.3

백강 문정사랑 2013. 9. 16. 13:27

 昔の思い出話をします。



 

 私が韓国の大学院の修士課程で学んでいた頃の話です。



 

  主任教授がちょっとくせのある人でした。



 

  この先生、(教授とは呼びたくない、、、、)


 

 いつも口から出る言葉が


 

  「どうやったら予算を引っ張り出せるか」ばかりで


 

 あとは


 

 『会食の席はどこにしようか」


 「手土産は、、、」 


 

 ということばっかりで、『研究」のことに関して話した記憶が全く出てきません。


 

  

 論文の評価も


 

 字の別ち書きの方法にばかりこだわって、


 

  内容面での指摘ってあったかしら? 


 

   無かったと思う。



 

   大学で名札をつけてもらわなければ


 

 絶対に「大学教授」には見えない、


 「隣のおっちゃん」のような風貌の先生でした。



 

  麦わら帽子が異常に良く似合う、そしてランニングシャツと ああ山下清とちょっと似てるかも。




 

  私との関係はただの


 

 「大学の主任教授」と「大学院生」との関係だったのですが


 

 どういうわけか、ある日、この先生が私にイキナリ


 

   助手になれ! というのです。



 

 つまり自分の下で秘書みたいなことをやれ! というのです



 

  「絶対イヤー!!」 と思いました。


 

 大体私は外国人学生で、人より何倍も勉強しないといけないのに


 

  助手になんかなったら勉強の時間がなくなるじゃないですか。



 

   「勉強のほうでも力になるから!」とか


 

  『他にほんとに頼む人がいないから!」 とか


 

  「事務は全部助けるから!」 とか


 

   いろいろ言われてしぶーしぶー引き受けたのですが



 

  一日同じ研究室にいるようになってみると


 

 この男一日中本一冊広げない、資料一つ見ない!


 

 あんたホントに研究職の人間なの!


 

  

  この先生の授業というのは


 

 おそらくご自分の博士論文のネタを


 

 何十年も使いまわしています。


 

 新しい研究をしないから、その大昔に知った事実の評価さえ変化してるというのに!


 

 それも院生にバレバレ。



 

  

  しかも私に


 

 「えみこが助手になったから、今日から日本語教えてもらおうかなー」 とか


 

  甘いアホなことをいうので


 

 「自分の仕事もかたづいてない人間に教えられませんよ。


 

  なーにが日本語! 自分の仕事をしましょう!


 

   先生、さあ、この書類さっさとかたづけて決済してください。


 

   そっちが終わらないと私も終わらないんですからね!!」 ときつくにらんだ。



 

  そして私の態度が冷たいといい


 

 「おかしい!日本人の女性はやさしいというのに


 

   なんでこんなにキツイんだ??」 とぶつぶつ言うので


 

  「相手によるんですよ!」


 

  

  まあ、そんなこんなで


 

 なんとか助手職であれやこれやの仕事を経験するうちに


 

 それなりにいろいろなことを覚え、


 

  助手期間をすごしていたある日、



 

   

 研究室に遊びにきていた他の教授が私のことをえらく褒めてくれました。


 

 そうすると この先生は


 

 「えみこはオレが育てた!」

  


 

    と胸を張るのです!!!



 

 あんまりびっくりして言葉が出ないというか、、、


 

 他学部の教授の前で、主任教授を罵るわけにはいかず


 

 心の中で

 

 「ボケー!! いつあんたに育ててもろーた!!


 

   

そんなこと、あんたの口から言うことやないわー!!


  このおっさん! これ以上ゆーたら首しめたるぞー!

  

   だまれー!!」


  と思ったのでした。


しかし別の授業で漢文科の教授が


 私の心を読んだようにこんな話をしました。




 「 「オレが育てた」ってよく言うじゃないですか。


 あれって間違ってますよね。


  立派な人物になったのは、その人にもともとの能力があったから


  教師なんてただのヘルプなんです。


   オレが育てたんじゃなくて、もともと本人にそれだけの力があったんですよ」


 


   ああ、今思い出してもいい教授だった。 権教授、、、、


  あの授業のレベルの高さ、 あのおっさんと大違い。




  なんでこんな昔ばなしを書いたかというと


 今年うちの町でソウル大学の医大に入った女子学生が出た。


  その子の母校に今うちの娘が通っている。



   担任の先生が


 「今年ソウル大に入ったあの子はね、、


  私が担任して私が教えたんだけど


  中学の時ね、、、 私の教え子の中ではね、、、」



 という話を娘達に延々としてくれたそうだ。


 多分これからこの先生は一生これをネタとしていくことだろう。



  

   その話をきいて


  ソウル大に行く子には行くだけの力があったんでしょう


  まちがてっも 「私が育てた!」なんていわんといてくれよ


  と思ったので、つい昔のことを思い出したのです。



 うちの夫も私が誰かに褒められるたびに


 「私が育てたんですよ、うちの妻!!」


  と嬉しそうに言う。


  

 あほー!!あのアホ教授みたいなこといわんときー 


  最近は私に怒られるのであんまり言わないが。


 

  光源氏の昔から


 男の人は「オレが育てた」 が好きみたいである。


  たぶん韓国の男も。  


 しかし私には笑って許す度量が無い。


 ホントに私が「この人に育ててもらった」と思う人は


 絶対自分の口からそんなこといわないんだけどなあ。